投稿日:2006-04-15 Sat
『紙ピアノ』2006年
風媒社
著・伊津野 重美
写真・岡田 敦
カラー写真に短歌の添えてあるページがあるという、ぱっと見きれいな歌集。
でも読んでいくうちに、作者はこころやからだにつらいものを持ち、
かなり厳しい闘病生活を送っている(あるいは送っていた)ことが分かります。
ハレーションおこした街に眩み立つ ましてあの世は目映き荒野
皮膚を張る骨盤に性の名残おく拒食患者と共に湯に入る
ブラインドの羽傾けて天上の光を入れる 強く生きたい
一首一首を読んでいくというより、歌の向こう側にいる作者の姿がどんどん見えてくる、それを追いながら、読んでいく本、読ませていく本です。
個人的なことですが、途中からは、つらくて冷静に読むことができませんでした。それでも歌集を放り出せなかったのは、この歌集から目をそむけることは、作者の、というより、すべての人を取り巻く現実、こころから目をそむけることになるように思われたからで、
肉のうち深くから出づ指の骨 ただ抱きしめてほしかったこと
中盤くらいまでは、この歌がいちばんの絶唱だと思い読みすすめていました。
後半、少しずつ光へ向かう作者が見えてきます。
うすべにがうれしいのです一心に蘂降り注ぐ道のやさしさ
作者は、おそらく激流ような絶望を受け入れ、
そこからひとすくいの希望を見出すことができたのでしょう。
眩しがる瞳よ ああ なんという不思議 あなたがわたしを愛し始める
(*ルビ 瞳=め)
あえて、もっともまぶしかった歌は引きません。
この歌集に収められている歌は、誰のこころにも存在しえる、苦しみ、悲しみ、
そして、希望です。
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