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笹井宏之

Author:笹井宏之
◇1982年夏生まれ
◇ししゃも好き
◇療養生活をおくりながらあっけらか
 ーんと短歌をつくっています

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『かばん』2006年4月号を読む
新年度ということで、表紙や紙の手ざわりがガラっと変わっていました。
あたらしく入会された方の作品も興味深い。
印象に残った歌をいくつか挙げていきたいと思います。


 水面を素足で混ぜる沈んでも沈んでもそっと浮上する月
                      伊波真人



口語は風景を書きとめるのにあまり向いていない、けれどもこの歌を読むと
壊れてはかたちを取り戻す月がありありと浮かんできます。
少年は素足で混ぜたその月を、どのように眺めていたのでしょう。


 どの駅にも駅舎があって店がありいつかはここに住もうと思う
                         井辻朱美



ファンタジーの世界を31文字削岩機でごりごりっと掘り取ってきたような
世界観を持っておられる井辻さん。
そのなかにこういう“宿屋”的な歌があると、なにかほっとします。
ファンタジー世界への憧れを越えて、人の持つ“こころ安らぐ場所に住みたい”
といった普遍的なおもいを感じさせてくれる歌です。


 花冷えの風に酔いまで冷めたころカラスが啼くから帰ろ、どこかへ
                         オカザキなを



「どこかへ」のところで、この歌にさらわれてしまうのではないかと、ふるえました。
どこにだって帰れる場所はあるさ、とも読むことができるし、
どこか得体の知れない場所へ連れていかれる感じもあります。
お酒を飲んだあと、ひとりで夜明け前の路地を歩く。
そして、うれしいともかなしいともつかない表情で「帰ろ、どこかへ」とつぶやく。
そんな作者が、僕には見えました。


 パインアメ輪っかのままで飲みこんで今日胃袋と婚約したの
                         柴田瞳



説明不要の衝撃とおもしろさ。
でもがんばって説明してみると……パインアメ、
あの安価で求めることができるパイン味の飴ですね、
あれをなにかの拍子で飲みこんで(たぶんのどが痛かったのだと思う)、
形状から婚約指輪のように思われた。
そして婚約したように思われた。
まあ、でも溶けてしまうし、すぐに婚約解消になって……。
ごめんなさいうまく説明できません。
でもそういう歌こそ、強力なのだと思います。


連作としては丹羽まゆみさんの「まなこは風のやうに」がおもしろく、
駄菓子屋と駄菓子屋の“ばつちやん”をとりまく8首がひとつの小説のように展開されていて、
巧みでした。


* * *


なんでもかばんに詰めたがる僕にとって、
なんでも詰まっている『かばん』 の雰囲気は心地よいです。


 


短歌 | 01:39:54 | Trackback(0) | Comments(6)